知っておきたい、いや知っておくべき賃貸オフィスの耐震構造

閲覧数:2,042     更新 2016年10月31日更新
賃貸オフィス物件を探す上で、ビルの安全性を重視するというベンチャー企業経営者の方も少なくないと思います。賃貸オフィスにはさまざまな災害が降りかかる可能性が考えられますが、東日本大震災以来、やはり最も気になるのが地震への備えです。つまり耐震構造ではないでしょうか。知っているようで、実は知らない、賃貸オフィスビルの耐震構造について、経営者として最低限知っておくべきことについてご紹介します。

そもそも耐震構造とは一体何なのか?

耐震構造とは、建築物そのものを頑丈にするための構造のことを指します。具体的にいうなら、鉄骨の強度を上げたり、鉄筋の数を増やしたりするなどの方法によって、壁や柱を強化し、地震の際の振動エネルギーを受けても耐えるようにするわけです。振動を軽減させるという発想はなく、まともに揺れを受けとめつつ、それを凌駕する強さでもって倒れないよう踏ん張る構造だといいかえることができます。建物自体は大きく揺れますから、屋内に設置された家具などが倒壊しやすいという特徴があります。

免震構造・制振構造との違いとは?

耐震構造とよく似た言葉として、免震構造・制振構造があります。それぞれついてご説明します。まず免震構造の最も大きな特徴は、地盤と建物とが切り離されている点です。具体的には、ビルと地面との間にゴムなど、地震による揺れを建物に伝えないための装置を設置してビルが揺れないようにする工法のことをいいます。地震時の揺れを3分の1ないしは5分の1ぐらいにまで軽減することができるといわれています。ただコストがかかるというデメリットがあります。制震構造とは、地震エネルギーを吸収するためのダンパーを壁や柱、屋上などに設置する構造のことをいいます。揺れに対してダンパーが変形することで柱・梁へのダメージを軽減します。

旧耐震基準および新耐震基準について

1981年6月1日に建築基準法が改正され、新しい耐震基準が施行されました。両者には大きな違いがあり、阪神大震災では、いずれの耐震基準のもとで建てられたかによって建物の被害状況が大きく異なったといわれています。例えば、旧耐震基準では、「震度5程度の地震に耐えうる住宅」と規定されていたものが、新耐震基準では「震度6強以上の地震でも倒れない住宅」とされました。また、新耐震基準には、旧耐震基準では触れられていなかった大地震でも「建物を崩壊させない」と明確に規定されています。1981年以降も、建築基準法は何度も改正されています。耐震基準についても手が加えられ、それに応じて耐震構造もまた進化しています。

どんな耐震構造も絶対的に安全とはいえない

新耐震基準は、規定をすべて満たしているからといって、どんな地震があっても安全であることを100%保証するものではありません。耐震基準は現行の技術レベルによって定められた最低基準を示しているに過ぎず、予測不可能な自然現象を相手にしている以上、建物は常に危険な状態にあると認識しなくてはなりません。また、新耐震基準が「震度6強以上の地震でも倒れない住宅」というのは、地震が単発的であることを前提にしています。つまり連続して何度も大きな揺れが襲った場合のことまでは想定できていないことにも留意すべきでしょう。
賃貸オフィスビルの耐震構造についてご紹介してきました。やはり新耐震基準のもとで建てられたビルが安心と考えておいでの方が多いと思いますが、ひとつだけ注意点があります。それは、新耐震基準が施行された1981年6月1日以降に建てられた建物がすべて新耐震基準を満たしているというわけではないことです。改正前に建築確認を受け、改正後に竣工しているケースもあるからです。オフィスビルの建築確認から竣工するまでにかかる時間を考えるなら、1983年6月あたりがひとつの目安になるでしょうか。新耐震基準のもとで建てられたオフィスビルをお探しになる際は、ぜひお気をつけください。
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