ちょっと聞きなれない言葉、「ピロティ」をご存じでしょうか?「ピロティ」はフランス語で「杭」という意味ですが、建築用語では、ある特殊な建築形式を指します。実はこのピロティを有する建物は、都心にも多く存在しており、あちらこちらで見かけることがあると思います。今回はそんなピロティに注目。ピロティについてのあれこれをご紹介いたします。
ピロティとは、建物の1階部分が柱(構造体)のみで外部空間となっている建築形式のことですが、その構造体や空間自体のことを指すこともあります。1階がオープンスペースになっていて駐車場として使用され、2階から居住スペースになっているマンションやオフィス・店舗などをよく見かけると思いますが、これらがピロティ形式です。最近は一般の住宅にも人気が広がっているようです。しかし、耐震性には不安があり、大型のビルやマンションでは一部分だけをピロティ形式にしているところもあります。
ピロティのメリットは、開放感がありデザイン性に優れていること。また、駐車場などに利用されるため、土地の有効利用にもなります。さらに、海岸に近い土地では津波が来ても水が分散して流れるため、津波に強く安心です。風も同じように通り抜けるので、台風にも強いということです。デメリットは、やはり耐震性に不安があることですね。1階部分は柱のみで支えているため、壁のある建物より揺れが強くなります。そして、地震の揺れは2階以上の居住部分に大きく伝わってしまいます。柱の数を増やすなど、強度を向上させるための対策が必要になります。
ピロティを最初に建築に導入したのは、近代建築の3大巨匠の一人「ル・コルビュジェ」です。ル・コルビュジェは「モダニズム」という建築における概念を世界中に広めた建築家でもあり、彼が残した「住宅は住むための機械である」という言葉はあまりにも有名ですね。また、「近代建築の5原則」を提唱したことでも知られています。「近代建築の5原則」は、ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面の5つ。1931年に設計したサヴォア邸ではこの5原則が見事に体現されています。ほかにも多くのル・コルビュジェの建築作品にピロティが見られます。日本で唯一彼が設計した建築物は最近世界遺産に登録されて話題となっている上野公園内の「国立西洋美術館」です。彼が設計した当時のピロティは、現在はガラスを入れられるなどして変えられ、1階の大部分が室内となっています。
ピロティ形式は、日本でも有名建築家たちにより1950年代から導入されるようになりました。現在においても輝きを放っている、有名なピロティ形式の建築物をご紹介いたします。
○広島平和記念資料館……1955年建築、丹下健三氏設計
○京都会館……1960年建築、前川國男氏設計
○日本生命日比谷ビル……1963年建築、村野藤吾氏設計
○東京都庁舎の渡り廊下……1990年建築、丹下健三氏設計
○東京都江戸東京博物館……1992年建築、菊竹清訓氏設計
このほかにも、注意して歩けば、さまざまなピロティ形式の建築物に出会うことができます。
普段は注意して見ていなかったビルの形も、思い出してみたらピロティ形式だった、よく行くレストランがピロティ形式だったなんてことも多いと思います。それほど身近ところにもピロティは存在しています。街を歩くとき、少し歩を緩めて周囲の建物を見回してください。街は大きな美術館です。なぜなら、建築物という芸術作品が所狭しと並んでいるのですから…。
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