賃貸オフィスをご検討の際、オフィス移転ご担当者さまにとって「なぜ入居審査に通らなかったのか」がわからないのは大きなストレスです。貸主(ビルオーナー)側は、審査でNGになった理由を原則として公表しません。そのため、担当者さまご自身が「どのポイントで落ちる可能性があるか」を把握し、事前に対策を立てることが成功のカギとなります。
賃料を滞りなく支払えるか。
ビルの品位・管理方針と合っているか。
テナント同士のトラブルを防止するため。
オーナーは「賃料を確実に回収できる」「ビル価値を維持できる」相手を選びたい──それが入居審査の本質です。
まずオーナー(貸主)様が最も重視するのは、毎月の賃料をきちんとお支払いいただけるかどうか、そして突然の倒産リスクがないか、という点です。多くのビルでは「直近3期分の決算書(損益計算書と貸借対照表)」のご提出をお願いしています。もし決算書を3期分ご用意いただけない場合は、その時点で審査が通らないビルも少なくありません。
特に立ち上げ間もないベンチャー企業様の場合、まだ決算書がそろわず審査を通過しづらいことがあります。そのような場合には、連帯保証人を立てることや、保証会社にご加入頂くことで審査をして頂けるケースもございます。通るかどうかはまた別です。
また、法人ではなく個人事業主様の場合には、決算書の代わりに「所得証明書(確定申告書の写しなど)」をご提出いただくことで審査を受けられる場合もあります。
次に、ビルごとに「受け入れ可能な業種」に制限を設けていることがあります。理由は大きく分けて二つです。一つは、すでに入居中のテナント様と事業内容が重なり、ビル内で商売が競合してしまうことを避けるため。もう一つは、オーナー様や管理会社様が特定の業種に対してイメージや経験から“不安”を感じられるためです。
業種の適否は、申込書を提出する前でも確認可能な場合がほとんどですので、営業担当者に遠慮なくご確認ください。
業種と似ていますが、「どのようにそのオフィスをご利用になられるのか」も審査のポイントです。例えば不特定多数のお客様が頻繁に出入りする用途は、純粋な「事務所利用」とは管理リスクが異なるため、お断りされるケースがあります。また、コールセンターのように一般的な事務所よりも人の密度が著しく高くなる運営形態も断られるケースがございます。
ビルの管理体制やセキュリティポリシーに合うかどうか、具体的に何名様でどのような時間帯にご利用になるのか、事前に詳しくご説明いただくとスムーズです。
帝国データバンクの信用調査会社による「企業評点」が重視されているビルオーナー様もございます。特に大規模なビルのオーナー様ほどその傾向が強いと言えます。評点が51点以上であれば多くのビルで問題なく通過するといわれ、一方で50点以下ではご入居いただけない物件もございます。
なお、評点は「信用調査会社への決算書提出」「インタビュー対応の有無」によっても変動します。もし評点が基準に達しない場合は、最新の決算書を提出して再評価を依頼したり、担当者からオーナー様へ事情をご説明したりすることで、個別に交渉できることもございます。
昨今はインターネット上の情報も審査材料の一つです。代表者様に過去の逮捕歴や大きなトラブルがないか、SNSやニュース記事などを通じて調査されるケースがあります。たとえ帝国データバンクの評点が高くても、風評がネガティブだとお断りされる可能性があります。審査で理由を明言されないことも多いため、不安がある場合は事前に当社担当までご相談ください。
最も厳格なのが「反社会的勢力との関わりがないかどうか」の確認です。ここで問題があると判断された場合は、他の条件をいかにクリアしていてもご入居はできません。発覚次第、弊社でもお取引は差し控えさせていただきます。
貸主様は「賃料支払能力」「業種」「用途の適合性」「信用力」「風評」「反社チェック」などを総合的に判断し、ご入居を許可されます。
審査に落ちてしまう原因はオーナー様から直接お伝えいただけないことが原則ですので、ご担当者様ご自身が事前に「どのポイントがネックになりやすいか」を把握し、必要書類や説明内容を万全に整えておくことが重要です。
また、審査のハードルも視野に入れた上で、入居審査が通るビルの中から候補を選定していくことも重要です。