フリーランスでオフィス移転を考えているかたなら、「原状回復」という用語を一度は耳にしたことがあるでしょう。オフィス移転の際のトラブル率が一番高いのが、この「原状回復」にまつわるものです。これは人間同士の認識の齟齬が発生原因となっていることが多く、とても繊細な問題なのです。「原状回復」について知識をもち、トラブルを回避できるように努めましょう。
賃貸物件を退去する際、借主には原状回復義務があります。賃貸オフィスや貸事務所の場合、とくに気をつけたいのは、一般住宅とは違って、普通に使用していて汚れたり傷んだりした、いわゆる自然磨耗部の原状回復についても借主負担となるという点です。事業内容によっては、間仕切りを設置するなど大がかりな内装工事をしている場合もありうるため、貸す側からすれば原状回復にかかる費用を想定しづらいことなどがその理由です。ですから、仮に内装にほとんど手を入れていないという場合でも、退去時に見つかった一般住宅と同等レベルの通常損耗部の修繕は借主が負担することになります。
それでは、原状回復工事をスムーズに進めるにはどのような手順を踏めばよいでしょうか。まず、退去時にトラブルになるのを避けるため、入居時に結んだ契約内容をしっかりと確認しましょう。そして、契約期間終了までに原状回復工事が完了しているように、工事のスケジュールを組むことが大切です。一般住宅の場合は契約期間終了後に原状回復工事が始まるということが多いのですが、オフィスの場合は明け渡し日までに回復工事を終えていなければなりません。そのつもりで、原状回復の必要な箇所をピックアップし、工事を行う業者を選定するために見積もりを依頼していきます。期日までに工事が完了するように発注をかけていきます。
借主負担となると、原状回復に必要な費用がどれくらいのものなのかが気になるところ。間仕切りや照明など大がかりな内装工事を行っている場合はともかく、とくにそうした工事をしていないようなら、通常は壁紙や床材の貼り替え、天井の塗装、電球の交換といったことが原状回復の項目として挙げられます。
原状回復にかかる費用の相場は、「坪単価2.5万円〜3万円」が目安といわれています。オフィスが大型のタワービルなどの場合はさらに坪単価が上がります。他方、個人オーナー所有のビルなどだと、安くすむケースもあります。退去が決まった時点で、ビルオーナーと話し合いや相談の機会を持つようにするとよいでしょう。
原状回復以外にも退去時にコストがかかってしまう部分があります。とくに注意したいのは廃棄物処理費用です。移転に際していらなくなった機器を廃棄するには相応の費用が必要になります。パソコンはもちろん、コピー機などのオフィス機器類、デスクや棚といった大型の家具、パーティーションなどは、思いのほか処理費用がかさむもの。また、ポットや電子レンジなどといった家電を移転の際に処分するケースも多いと思いますが、事業と直接関係がないアイテムの廃棄手続きはどうしても忘れがちですので、気をつけましょう。また書類や書籍などの紙ものも、数量によって処理費用が発生しますので、あらかじめ見当をつけておく必要があります。
オフィス移転にはさまざまな費用が必要になってきますが、できるだけ費用を節約したいもの。そこで、廃棄処分するものや撤去する設備が決まった時点で検討しておきたいのが造作請求です。借り主が、入居後にオフィス設備工事を行うことで、オフィス環境が改善されることがあります。エアコンの設置や、照明器具の増設によって入居前よりも快適になっているケースがこれに該当します。このような場合、せっかく向上したオフィス環境を元に戻す必要は必ずしもなく、ビルオーナーと交渉し買い取ってもらうことが可能です。これを造作請求と呼びます。ただし、この請求に際しては事前の契約が必要な場合もありますので、入居時や設置時に確認することが望ましいでしょう。
賃貸オフィスの原状回復義務、また廃棄物処理費用や造作買取り請求についてご紹介してきましたが、いかがでしたか。オフィスを移転する際は、どちらかというと持ち出すものの方に気を取られがちです。原状回復に必要な費用や処理費用が思ったよりもかかり、移転コストが想定していた以上になってしまうのはよくあること。そんな時、造作買取請求権について知っておけば、オーナーにとっては資産価値の向上、借主にとっては移転費用の削減と、双方にとって有利な結果をもたらしてくれるかもしれません。ルールや制度をしっかり理解し、よりスマートなオフィス移転を心がけましょう。
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